アメリカンホームダイレクトのエッセンス
繊維のPの買収で保険業への進出の機会ができたと同様に、D杜の買収は、三つの新しい分野への参入の機会を与えてくれたのである。
D社は、百貨庖のほかにも、スーパーやガソリンスタンドで顧客に渡す、スタンプを供給するB社という企業を持っていた。
スタンプを集めた客は、それを口問物と交換できる。
その品物を買うために、スーパーなど加盟業者は、現金あるいは証券からなる準備金をつくる。
これをB社が預かって運用する、という仕組みになっていた。
一九六0年代終わり頃には、その額が六000万ドルを超えていた。
この未償還の準備金を使ってPは、製菓会社、新聞社、S&L(貯蓄貸付組合)などの企業を買収することができたのであるPは、一九六0年代の終わり頃から、子会社を使ってB株を買い始めていたが、P自身でも買っている。
Pは、D社を併合してB社の過半数の株式を握り、一九八三年にはついに全株を取得して、吸収合併という運びとなった。
S社一九七二年一月、B社は、西海岸を本拠とする箱入りチョコレートの製造・販売会社S杜を買収した。
提示された売却価格は四OOO万ドルだったが、同社には一000万ドルの現金があったので、実質的な売値は三000万ドルということになる。
Pは二五OO万ドルで交渉し、結局、売り方はそれを受け入れた。
その後長期間にわたってS杜の経営責任を担ってきたのがCである。
S社は現在、傘下に二二五のキャンディー庖を有し、年間二七OO万ポンドのキャンディーの製造・版売を手がけている。
一九九三年の売上げは二億O一OO万ドルで、Pは、この部門から二四三O万ドルの営業利益を得ている。
全米のチョコレート消費が不振である状況からすれば、特筆すべき好業績と言えるだろう。
この成功の基盤として欠かせなかった要素は、製品の高い品質と顧客サービスであった。
一九八二年にPは一億二五OO万ドルでS社を買いたい、という申し出を受けてい九七二年の買収時に支払った金額の五倍!である。
彼はこの申し出を断ったが、賢い選択だった。
過去二年間に、Pは、税引後の純益として二億一二OO万ドルをS社から受け取っている。
この間、S杜が設備投資等に費やした資本支出は四四OO万ドルで、同期間の償却費である三九OO万ドルにほぼ見A合う額だった。
るB社S社と同様に、新聞のB社も、B社経由でP・グループに加わった。
一九七七年に、E遺産から、三三OO万ドルで買い取ったのである。
子供の頃にPは、一人の友達と一緒にグステーブル・ボーイ・セレクション。
という競馬予想の新聞を発行していたことがある。
当時の彼にとっては、大都市の主要新聞のオーナーになることなど夢に過ぎなかった。
だから、今日の彼は、Bの成功を誇らしげに話す。
まるで子供の功績を喜ぶ父親のようだが、それには十分な裏付けもある。
新聞の成功を計る統計としては、普及率とニュース・ホールとがある。
普及率は、その地方の所帯数の何パーセントが購読しているかという数字で、Bは、大都市の主要新聞のなかではトップであった。
ニュース・ホールは、総紙面に占める広告を除いた記事の比率であり、九九O年の五二・三%は全米一の高率となっていた。
ニュース・ホールと収益とは、切っても切れない関係にある。
この率が高い新聞は、広い層の読者に好まれるから、普及率も上がる。
普及率が上がれば、広告の価値が高まる。
それに加えて、Bでは、経費節減に努めたので、紙面の半分をニュースで埋めることができたのであった。
この成功の多くの部分は、編集者のマリー・ライトと発行者のスタン・リフシーに負うものである。
この二人はともにB杜による買収と、それに続くPへの併合の当時から、その職に就いていた。
この二人こそ、Bが新聞界に確固とした基盤を築いた原動力であり、その功績は評価されるべきだろう。
一九八二年以降、Pは、Pの年次報告書のなかに案内のスペースを設けた。
そこで、売却の意思のある企業を求めたのである。
彼が基本的な条件としたのは、少なくとも税引利益一000万ドル以上の安定した収益を上げていること、あまり多くの借入金なしに株主資本利益率を高く保っていること、業務が複雑でなくわかりやすい内容であること、などである。
ハイテク関連であれば、自分にはよくわからないだろうと認めている。
そして最後に、経営陣は現業にとどまることとし、人材を送り込むことはしない、という条件をつけた。
一九九O年の年次報告書に、同族経営の会社を売る意思がある、という経営者にPが書き送った手紙が紹介されている。
これは、Pの考え方を明確に一部すものとして興味深い。
彼はその手紙に、次のように記している。
「Pにはか企業買収部。
といったものはなく、MBAの肩書を持った専門のスタッフを抱えてもいない。
企業を買収しても、経営者を送り込むことはしない。
その企業の経営者には、世間一般には考えられないほどの自由裁量が委ねられるし、通常は、買収前の(同族)経営者が、引き続き経営に当たることになる」事実Pは、通常の場合、経営に成功して業績を上げてきている経営陣に対しては、そのままとどまるように要請している。
税金の関係で、Pは企業買収に際して連結決算の対象になるのに十分な数の株式を取得する。
そして、それまでのオーナーは、少数株主として残るケースが多い。
Pは、資本の配分と経営者への報酬の二つだけは自身で決めるが、その他の権限は、各経営陣に完全に委譲する。
彼は「業界の状況などについて相談してくる経営者もいるが、そうではない者もいる。
それぞれの個性ということでよいのではないか」と二百っている。
また彼は、売却を考えている経営者に対して、次のように書き送っている。
「あなた方は、以前より金持ちになるということではありません。
違った種類の資産を持つことになるというに過ぎないのです。
多額の現金との引き換えに、非公開の株式の一部を受け取る。
そして現金は、結局は株式か債券への投資に回ることになるでしょう。
それら証券の発行会社については、ご自分の会社ほどにはご存じないかもしれませんが」非公開会社のオーナー一族の間には、資産の配分についての争いが起こることが多い。
だから、Pが提案する形態は、理想的なあり方ではなかろうか。
オーナーは、資産を家族の聞に再配分することができるうえに、長い間育ててきた企業の一部を手元に残しておくことができる。
一方では、Pは、優良企業を傘下に収めて収益の分配を受けるとともに、実績の裏付けを持つ経営陣をも手に入れることになるからである。
年次報告書での案内の効力もあって、種々雑多な企業の買収が行なわれた。
一九九三年には、保険部門以外の売上げは二O億ドルに達し、税引利益からのPへの配分額は一億七六OO万ドルとなった。
これは周年のPの営業利益の三七%を占める額であった。
N社(NFM)は、オマハの一店舗だけで営業する全米一の家具小売屈である。
Pは、一九八三年にこの企業を買収したが、株式の一O%をオーナー一族に残して、以後もその経営を任せた。
Rが社長として引き続き経営に当たり、三人の息子、RとAとSも、その好業績に貢献した。
女家長であり、会長を務めるローズ・ブラムキンはルーイの母親で、ミセスBという愛称で呼ばれていた。
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